はじめに
**住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)**は、マイホームを購入した際に、支払った税金の一部が戻ってくる制度です。住宅購入は人生の中でも大きな買い物。その負担を少しでも軽くしてくれるのがこの減税制度です。
ただし、この制度には**「控除額の上限」があります。年末のローン残高に応じて計算されるとはいえ、「たくさん借りればたくさん戻ってくる」というわけではありません。実際には自分が支払っている所得税や住民税の金額によって、戻ってくる額が変わってくる**のです。
この記事では、以下のような内容をわかりやすく解説します。
-
住宅ローン減税の制度の仕組み
-
控除額の上限がどう決まるのか
-
実際に自分がいくら控除を受けられるかの調べ方(源泉徴収票・住民税通知書の見方)
-
ペアローンで控除額が増えるケースの紹介
1. 住宅ローン減税とは?制度の基本おさらい
● 控除の基本的な仕組み
控除額は、年末時点の住宅ローン残高の0.7%。
例:
年末残高が3,000万円の場合
→ 3,000万円 × 0.7% = 年間21万円の控除枠
ただし、**実際に控除されるのはこの金額「まで」**で、支払った税額に応じて決まります。
● 控除期間は10年~13年
-
原則:10年間(2022年以降入居)
-
ZEHや長期優良住宅などの省エネ住宅:13年間
● 控除対象の上限(住宅の種類ごと)
住宅の種類 | 控除対象借入残高上限 | 控除期間 |
---|---|---|
認定住宅(長期優良住宅など) | 5,000万円 | 13年 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 13年 |
一般の省エネ住宅 | 4,000万円 | 13年 |
それ以外の住宅 | 3,000万円 | 10年 |
● 対象になる条件(主なもの)
-
自分が住む住宅であること
-
返済期間10年以上のローン
-
床面積50㎡以上(一定条件下で40㎡以上も対象)
-
合計所得金額が2,000万円以下
2. 住宅ローン減税の「上限額」とは?年末残高と年収の関係
● 控除できるのは「所得税+住民税の一部」まで
住宅ローン減税で控除されるのは、次の2つの合計までです:
-
所得税からの控除
-
住民税からの控除(最大13.65万円)
つまり、支払った税金より多くは戻ってこないということです。
● 具体例
-
年末ローン残高:3,000万円
→ 控除枠:3,000万円 × 0.7% = 21万円
あなたの納税額が以下の場合:
-
所得税:8万円
-
住民税:15万円(9.75万円が控除上限)
→ 合計控除可能額:8万円 + 9.75万円 = 17.75万円
→ 控除枠21万円はすべてカバーできる
一方で、税額が低ければ、控除枠を使いきれない可能性もあります。
3. 実際に自分が受けられる減税額を確認する方法
● 源泉徴収票で所得税を確認
-
見る項目:「源泉徴収税額(⑫番)」
-
内容:あなたが1年間で支払った所得税の金額
例:⑫番が「120,000円」なら、最大12万円まで所得税から控除可能。
● 住民税決定通知書で住民税を確認
-
**書類名:**住民税決定通知書(6月ごろに届く)
-
確認欄:「所得割額」
→ 住民税からの控除は、最大9.75万円まで
→ 「所得割額」がこれ以上あれば、住民税控除もフルに使える
● 計算例
-
所得税:8万円
-
住民税(所得割額):16万円
→ 控除可能額:8万円 + 9.75万円 = 17.75万円
4. 8000万円借りる場合、ペアローンにした方が得?
● 単独ローンの場合(夫が8000万円)
-
控除対象:最大5,000万円
-
控除額:5,000万円 × 0.7% = 年間35万円
-
夫の納税額が仮に30万円なら、控除額は30万円まで
● ペアローン(夫婦で4,000万円ずつ)
-
夫:4,000万円 × 0.7% = 年間28万円
-
妻:4,000万円 × 0.7% = 年間28万円
-
控除枠合計:56万円
仮にそれぞれの納税額が以下なら:
-
夫:30万円 → 控除28万円
-
妻:20万円 → 控除20万円
→ 合計控除:48万円
→ 単独ローンより年18万円も多く控除される!
10年間続けば、180万円の差!
● ペアローンの注意点
注意点 | 内容 |
---|---|
諸費用が増える | 登記や契約関連の費用が2人分発生 |
万が一のとき | 一方が返済できなくなるリスク |
所有権も分割される | 相続・売却時に調整が必要になる可能性あり |
5. まとめ|制度を正しく理解し、自分に合った選択を
住宅ローン減税は、正しく活用すれば数十万円〜数百万円の節税効果が見込める非常に有利な制度です。
ただし、借入額が大きくても税額が少なければ、控除しきれないという点に注意が必要です。
✔ 本記事の要点まとめ
-
控除額は「年末残高×0.7%」だが、税額までしか戻らない
-
源泉徴収票・住民税通知書で控除上限がわかる
-
ペアローンにすることで控除額を最大化できるケースが多い
✔ 実践アドバイス
-
家を買う前に、税金の確認をしておこう
-
シミュレーションをして、控除額を事前に予測する
-
夫婦で働いている場合は、ペアローンも検討してみよう
「借りる額」ではなく「戻ってくる額」に注目して、自分にとって最もお得な方法で制度を活用していきましょう!
コメント